西本:最近の高齢者施設はそれぞれ独自の特色を持った施設が増えてきている様に思いますが、その背景としてはどの様な事が考えられますか?
森戸:一番の理由としては、団塊の世代が高齢化を迎えるという事が大きいのではないかと思います。団塊の世代の人達はこだわりが強い方達が多いため、施設ごとで特色を出して差別化をしないと、その様な方達のニーズに合ってこないのではないかと考えています。私が担当した「えがおで寺塚」では、特にデザインによる差別化を強く意識しています。バリ風のインテリアを基調に、今までの高齢者施設とは一味違った特色を持たせています。お風呂も岩風呂や檜の個浴、足湯を設けたりして水廻りにもこだわっています。
「えがおで寺塚」外観
「えがおで寺塚」内観
西本:最近の高齢者施設では、デザインに加えてお風呂廻りで様々な趣向を凝らしていますね。寺塚の他にも、岩風呂や檜風呂、個浴なんだけど皆で入っている感覚になるお風呂、珍しい例では畳敷きのお風呂等当社の設計案件の中には面白い浴室が沢山あります。
森戸:特に浴室では大浴場に加えて個浴の要求が増えてきています。利用者のこだわりに応じて、大浴場、個浴、特浴を使い分けできる様な配慮が求められています。西本さんが担当された案件ではどの様な差別化を持たせていますか?
個浴とグループ浴
西本:デザイン的な事では、いわゆる高齢者施設とした感じではなく、高齢者の方達にとってのオシャレな生活の場としての雰囲気づくりを心掛けています。差別化という意味では、私が担当した「特別養護老人ホーム三沢長生園」では、広さを一つの特色として設計しました。この老人ホームは、4床室と個室のユニットが混在しているのですが、4床室の広さが施設基準の倍以上確保しています。一人当たりのスペースをゆったりと確保しつつ、多床室としての見守り易さにも配慮しています。居室の他、各フロアの食堂や地域交流ホールの広さは、他の施設よりもかなりゆったりと確保しています。これらの共用部をゆったりと確保する事で、園内でのイベント事を充実させていける様施設スタッフの方達と相談しながら設計を行いました。
森戸:郊外の立地を活かした三沢長生園と対照的な案件が「特別養護老人ホーム煌奏館」です。福岡市中心部の好立地を活かした都市型の老人ホームとして設計しています。限られた敷地の中で効率的なプランニングをする事で、広域型100床に加えデイサービスを併設する施設を計画しました。
西本:確かに、特別養護老人ホームがあれだけ中心街にあるという例はとても珍しいと思います。
森戸:今後の高齢化施設は、より差別化が進んでいくと思います。入居者の方達の生活の場として、単にベッド数だけではない生活空間の質として価値が求められてくると思います。
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